DMF法の原理について
福士  遺伝背景をベースにして、Population-based screening を考えるという、今まで余り聞いたことのない視点からお話いただきました。
花井  MS/MSや4-MUの従来法はなじみがありますが、DMF法は実物を見たことがありません。あれは12が1キットでしょうか。コストが他と比べて高いのか安いのか、あと手間などをお聞きしたいと思います。
真嶋  コストの正確なところは私もわからないのですけれども、少なくとも手間としては、最初のプレートからDBSから酵素を抽出します。①Extractが30分。30分インキュベーションすると、たんぱく質が抽出できるようです。マルチチャンネルでやっていますけど、②Loadは大体3 分ぐらいで、マルチチャンネルピペットで単に抽出物を移す感じだと思います。時間は「<3hours」とりますから、3 時間弱インキュベーションすればよく、この間はすることは何もないようです。カートリッジは12個なので、たくさんやりたければ、写真では8 個並んでいますので、一回で96個ということです。
福士  5~6 年前、アメリカで開発したとき、いろいろ教えてもらったことがあります。最初はもう少し少なかった。今48ウェルですが、2つはブランクで、3つがキャリブレーターに使って、残り43が検体に使えます。
3ミリから溶出した液をウェルに入れて、例えば4plexやりたかったら、4 枚用意しておけば、それぞれのウェルに数マイクロ移すだけです。溶出を30~50マイクロやって、ウェルからこれに数マイクロずつ移して、あとは専用の試薬を入れてスタートさせ、3時間放っておくと、全部の蛍光まではかるというシステムです。最初聞いたときはなかなかおもしろいなと思いました。
福士  写真で本体が4つ置いているのは、4種類やっているためなのでしょう。1項目について2台ずつ使っていると推測しますが、全部で8台置いて、繰り返しやると、一日で十分処理できると言っていました。年間6万か7万検体位だったと思います。
真嶋  そうですね。
福士  なので、これだけの機器があればそれが可能です。非常に簡単です。この後、吉田さんからKMBさんと熊本大学で開発した方法の話がありますが、原理的には一緒です。溶出(extraction)とバッファー系、それと酵素反応、至適pHとか塩濃度とか。いろいろあるので、タンデムのほうの溶出はカクテル溶液にしていますけど、ミックスしたもので全部一遍にやっていますね。その辺の違いが少しあると思います。吉田さんのところも、その辺をかなり工夫されているだろうと思います。
4MUとタンデムのMS/MSは、単位がどちらもμmole/L/h で出していますね。低いところでMS/MSのほうがきれいに分かれているということですが、従来の蛍光法とDigital microfluidics(DMF)法でどのぐらいの違いがあるのか、そのあたりも後でちょっと話していただければと思います。>>基質との親和性も関係あるのか、アッセイ系でのpHの関係なの、本来、それぞれのライソゾーム酵素で至適pHが違います。いろいろ検査する側としては知りたいと思います。
酵素活性値の低バックグラウンドが上がる理由
真嶋  低バックグラウンドが上がる理由が1つあります。それは基質由来の蛍光があるためです。例えば、1ミリモーラーの基質を反応させて、10マイクロモーラーの反応生成物ができたとすると、1%反応しているわけなんですけど、一方、そこにはまだ約1ミリモーラー、正確には990マイクロモーラーのサブストレートがあって、それ由来の蛍光は基本的にはほとんど変わらない。酵素活性は、基質がガクンと下がるところまでは反応させず、大体基質濃度が一定に保たれているところで直線的にはかるというのが酵素活性測定の原理原則なので、それを考えると、バックグラウンドは基本的には、蛍光の場合には余り下がらないですね。
福士  バックグラウンドのその分を拾っているわけですか。
真嶋  はい。それが乗っているんです。4MUなので、よく反応するこういうところまで来ると、かさ上げ分が見えなくなってくるんですけど、下がれば下がるほど、かさ上げ分が残っているのが見える。これがフォールス・ポジティブの原因の1つと考えられています。
石毛  Pseudodeficiencyが割と見つかって、結局患者さんは見つからなかったということがありました。現実的にスクリーニングを始めるに当たっては、試験的であってもルーチンであっても、多型をどう考えていくか、あるいはそれをなるべく除外する方向でまず1 次検査を行って、その後にどういう方法で診断していくかが非常に重要だろうと実感していました。
福士  今日は後で酒井先生から6plexのMS/MSのお話がありますので、それを含めて最後のところでいろいろお話ししていただきたいと思います。どうもありがとうございました。