ムコ多糖症でも新生児スクリーニングをすべきか?
遠藤  ゴーシェ病のお子さんはⅡ型だったのですね。
古城  そうです。
遠藤  アンブロキソールの治験をされているのですか。
古城  そうです。成田先生の治験で。
遠藤  うまくいけばいいですね。
古城  ミオクローヌス自体はちょっとふえた印象で、息止め発作とかには効いていると思いますが、一番効いたのはバクロフェンです。残念ですけど。
遠藤  そういうものですよ。ムコ多糖症Ⅵ型の妹さんは随分いいですね。
古城  顔つきはいいのですけれど。
遠藤  でも、走るのは速いのでしょう?
古城  走るのは速いです。あのすごい骨で、何で痛みもないのか。骨は、今日はお見せしませんでしたが、お兄ちゃんとほとんど一緒です。
遠藤  骨には効かないのですね。
古城  教科書に出るぐらいの骨をされていますが運動神経はいいのです。関節が丈夫だからだと思います。お兄ちゃんは自転車に乗れないですけど、妹さんは自転車に乗れるし、運動会の花形です。
遠藤  例えばⅥ型で新生児スクリーニングがされていて、お兄ちゃんが生まれてすぐから治療を始めていたらよかったですか。
古城  この顔になっていないですからね。
遠藤  新生児スクリーニングをしたほうがよかったですか。
古城  したほうがいいと思います。
遠藤  スクリーニングしたほうがいいかどうかという話になると、みんないろいろな意見をお持ちと思います。こういう症例ならしたほうがいいという人が多いですね。でも、この兄妹例ですら、状況は一緒だと言う人もいると思います。
古城  骨に関しては、残念ですけど、一緒です。
大橋  少なくとも、放っておいたらなかなか見つからないわけですから。
遠藤  見つからないです。井上先生の家族歴の話にしても、何十年も前の話ですが、その人たちは原因がわからぬまま亡くなっていらっしゃるわけです。それが何世代も続くことを考えると、やっぱりどこかで見つけて、きちんとしておくというのは大事ですね。
ムコ多糖症の早期では専門家がみてもなかなかわからない
大橋  ムコ多糖症にしても、最初はわからないですよね。
遠藤  ムコ多糖症の専門家が毎日診ていても、なかなかわからないです。
古城  この妹さんは、さすがに奥山先生が、生まれたときと酵素補充療法を始めるときにわざわざ見にいらっしゃいましたが、1 ヵ月でも顔つきは全然わからないし、3 歳になったときもわからない。
大橋  結局、スクリーニングしないと、早期治療を受けることができないわけですから、例えば5 年とか10 年とか経過があるかわからないですけど、早期治療は、やってみないとわからないですね。
遠藤  純粋に科学的に言えば、早期治療の効果があったかどうかは、早期治療をしてみないとわからない。
大橋  わからないですね。早期発見できないのだから、そういう意味では、スクリーニングは重要だと思います。
遠藤  医療経済的に言うと、患者さんの負担も含めて、今のようなスクリーニングができるようなら、やったほうがいいと思います。採血1 回で済むわけですからね。熊本は、中村先生の話だと、ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病までスクリーニングができるようになってきたのですね。あと、MPS Ⅰ、Ⅱが技術的にはもう可能。
中村  それもパイロットではかっています。
遠藤  見つかったら治療するしかないですね。骨髄移植するのですか。
中村  酵素補充製剤があるものは、とりあえず酵素補充療法をします。
遠藤 ゴーシェ病は酵素補充療法でしょうね。僕が以前診たのは、Ⅱ型でしたけれど、生まれてすぐ酵素補充療法を開始したら、発症が2 年ぐらい遅れました。それこそシャペロン療法と組み合わせたら、また違った結果になっていたかもしれません。