熊本地区におけるファブリー病の新生児スクリーニング
熊本地区では現行の新生児スクリーニングに乗せた形で、ファブリー病のスクリーニングを、2006 年に始めて、2016 年で10 年目となりました。
2013 年にポンペ病のスクリーニングを追加し、2016 年からゴーシェ病、ムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型をパイロット検査として実施しているところです。
今までにファブリー病古典型の患者さんは、男児で6 人が発見されています。
一番最初に見つかった古典型の患者さんが5 歳になったときに、発汗低下、お風呂に入ったときに手足が痛むという症状が出始めて、5 歳のときから酵素補充療法を開始しました。酵素補充療法の開始後、手足の痛みが軽減して、発汗量が増えたそうです。
スクリーニング検査における倫理的な注意点
酵素補充療法は、すでに複数種類が承認されています。スクリーニングを行っていく上では、倫理的なことも含めていろいろな課題が考えられます。
スクリーニングを進める際の医療機関における注意点
その他の新規のスクリーニングも含めて、医療機関が新生児スクリーニングを行うときには注意すべき点がいくつかあります。
新規スクリーニング研究の対象疾患
従来のスクリーニング検査に加えて、ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症のⅠ型、Ⅱ型を、新規スクリーニングとして行っています。福岡では2014 年7 月からファブリー病とポンペ病、愛知県では2017 年4 月から、ポンペ病と免疫不全症のスクリーニングが開始されています。私たちも免疫不全症のスクリーニングを始めようと準備をしているところです。
酵素補充療法が可能になったライソゾーム酸性リパーゼ欠損症や低ホスファターゼ症のスクリーニングも、技術的には可能であると考えています。しかし、実施するまでにはいくつかの課題があり、当面は研究として考えていくことになります。
新規スクリーニングの支援体制
タンデムマス・スクリーニングが始まった時、全国のいろいろな地域で、先天代謝異常症の疑いがある新生児が発見された場合、どのように対応するかが課題となりました。島根大学医学部小児科教授の山口清次先生はTMS コンサルテーションセンターを立ち上げ全国からの質問を受ける体制を作られました。私たちがボランティアの回答者をしています。さまざまな内容の問い合わせがあり、100 件/年程度にもなります。新規スクリーニングにおいても、そのような支援体制が必要かもしれません。九州先天代謝異常症診療ネットワーク会議などを通して、診療や治療の支援やスクリ-ニング体制の支援の仕組みをつくりながら、新規スクリーニングを進めていくことが大切であると考えています。
ファブリー病の新生児スクリーニング(まとめ)
ファブリー病では早期治療の有用性が明らかになっており、早期診断の重要性が高まっています。簡便・安価なろ紙血によるファブリー病のスクリーニング検査が可能となっています。診断と治療には専門施設との連携が重要であり、遺伝カウンセリングも必要となります。