遠藤 米国では国を挙げてライソゾーム病の新生児スクリーニングを実施する動きになっています。患者さんの働きかけというのは非常に大事かなと思います。
原田 今がチャンスだと思っています。平成28年5月に指定難病の検討が再開されましたが、こういう時にこそ情報を提供したり、働きかけていくことがとても大事だと思います。
秋山 私たちはこれまで何度か厚労省に新生児スクリーニングの要望をしています。にもかかわらず、これがなかなか実現していないというのが現状です。治療法があるなしではなく、費用対効果が問題なのかもしれません。
遠藤 費用対効果の計算は大変難しいと思います。
秋山 そうですね。実際、早期に治療していくことによって、今まで成人に達しなかった子供たちが成人になっていって、これから働くこともできるわけですから。少子化対策は子供を産むことばかりですが、難病の子で、亡くなる子を救っていくのも少子化対策の一つだと思います。
座談会風景 遠藤 新生児スクリーニングが19疾病に増えた時に費用対効果の話が出ました。1回の検査で病気が見つかるから費用は少なくて済むと。だから、今、話題になっているいくつかの病気についても、一括して検査できるから費用が安く済むというのが一つあると思います。
原田 やっぱり行政を動かすために必要なのは国民の世論ですね。
奥山 スクリーニング検査も有料にして希望者に行うことにすれば、費用対効果の説明もしやすくなる。妊娠中に、ご両親に対して病気やスクリーニング検査の説明していくのが現実的なのかと思います。
秋山 僕はそこから入っていくべきだと思います。
遠藤 現行のマススクリーニングは全額公費負担で、被検者の負担なしで実施されていますが。
原田 とりあえず携わる患者会から要望として出していくということが大事だと思います。行政として困るのは、不公平感が出ることです。それから、国民的な理解が得られない限りだめだという2点です。だから、そこが納得できるような状況をつくらないと物事は進まないです。
秋山 ムコ多糖症Ⅵ型は国内に10人ほどしか患者はいません。そういう病気でも新生児スクリーニングの対象として欲しいという要望を出す場合、公平・平等であるのならお金を払ってでも、やっていくのが一番早いやり方と思っています。私は正直言って、ムコ多糖症だけでもモデルケースでやって頂きたいと思っています。  それと、治療薬の有無についてですが、骨髄移植も一つの方法です。ムコ多糖症の場合、Ⅰ型とⅡ型、Ⅳ型とⅥ型で行われています。早い段階でやってもらいたいというのが正直なところです。
奥山 やはり、地域限定のパイロットスタディーからスタートして、新生児スクリーニングの実績をつくらないとだめでしょうね。
本間 ALDを早く見つけて骨髄移植した場合の、ある程度の治療成果も出ているわけです。だけど、「今、元気なのに信じられません」といって半年待つという人がいます。そうすると寝たきりになってしまう。そういう患者さんもいらっしゃることを考えると、試験的なほうがいいと思います。やってみて、反応を見て、世の中の人がどう思うか、受けたい人がどれぐらいいるのかというのはいいと思います。
原田 行政が容認しやすい状況という点でパイロットスタディーは認められるものなのでしょうか。
遠藤 理解のある自治体との話し合いを進め、新生児スクリーニングが何カ所か日本で広がっていけばいいと思います。