奥山 スクリーニングを普及させるためには、希少疾病を一般国民に理解してもらうことが重要です。そのためには患者会には頑張ってもらいたいし、病気の啓発も大切と思います。いかがでしょうか。
原田 スクリーニングで一番大事なことは、診断を確定させ早期治療に結びつけることです。ファブリー病でも腎臓機能が悪化し透析が必要になったり、心臓の症状が悪化しペースメーカーを入れる、脳梗塞になってしまうなど、典型的な不可逆的状況の中で診断されるというケースが未だに多いのです。
ライソゾーム病の専門医師だけではなく、腎臓内科、循環器、神経内科などの医師にも、早期診断・早期治療の重要性を理解していただきたいと思います。
座談会風景 奥山 スクリーニングによって、兄弟児で下のお子さんの治療を早期に開始したことによって、治療効果に大きな差が出たというエビデンスは大きなインパクトになっています。希少疾病に対する早期治療による効果について、一般国民の方々に理解してもらうことが重要です。
原田 難病法が平成27年1月1日に施行されました。ライソゾーム病などが指定難病になり、指定難病が56から一気に小児で704疾病に、成人が306疾病となっています。行政の取り組みは随分進んだと思います。
秋山 私もそう思います。
原田 今までの専門医の先生方が頑張ってくださったことがよくわかります。もう一つは、新生児スクリーニングが9疾病から19疾病になったことも追い風になると思います。難病の早期診断は、ある意味では、国民的な一つの課題でもあるかもしれません。全国的にネットワークをつくっていくことが重要ですね。
秋山 新生児スクリーニングでもハイリスクスクリーニングでも、小児科医だけではなく、産婦人科にも啓発活動をすることが必要だと考えます。
奥山 なるほど。
本間 私もそれは思っていました。生まれた後に考えるのではない。新生児スクリーニングがもし広がったら、未来の赤ちゃんのためになるわけです。国民に新生児スクリーニングを広げようとするのであれば、それなりの根拠というか、未来の赤ちゃんのためになりますといった方法がよいと思います。
秋山 普通の人は自分の子どもは難病などにはならないと考えています。私の子どもが6歳でムコ多糖症と診断されましたが、「まさかうちの子が」という感じでした。その一つの理由は、難病に対する教育が十分されていないということもあると思います。経験者として私は、難病は自分の身に起こり得るもので、遺伝子変異も皆持っている可能性があるのだと伝えています。妊娠から出産までの間に考える時間があります。そのときに、病気に関するパンフレットなどがあれば、学校とか小児科のクリニックなどでこういう難病がありますよということが広がっていくと思います。
本間 確かに。お腹の中にいる時、「ちゃんと無事に生まれるかな」とお母さんは考えますからね。
秋山 そうです。一番関心を持つ時期というのが妊娠中です。それなら産婦人科の先生と協力しながら、こういう希少疾病の情報を広めていくというのが、一つの良策ではないかなと思います。