愛知県における新規マススクリーニング事業
愛知県の新生児出生数は毎年65,000 人程度です。愛知県では専門施設が少ないため、スクリーニングでひっかかると、我々の施設に来ていただくことが多くなります。
ポンペ病はスクリーニングによる早期治療で効果が認められております。ポンぺ病、重度複合免疫不全症(SCID)を対象とした新規事業として有料で検査導入することを愛知県健康づくり振興事業団と検討し了承されました。具体的には、最初に成育医療研究センターでやろうということでお話しをいただいたものですから、愛知県の担当者といろいろ相談して、実際にどのようにできるかということを2年ぐらい前から検討していました。
最初は、普通のマススクリーニング用のろ紙の残りを使わせてほしいと要望しましたが、検体によっては量が足りなくなるものもあり、別に専用ろ紙を作って対応することとなりました。
料金に関しては当初はパイロットスタディーで、無料でできればいいかなと考えていました。しかし、開始後途中で有料になると非常に煩雑になります。また、県の事業としてお金が発生するとなりますと、お金を扱う施設、産婦人科、事業団の検査センターも含めて、県の条例を改正して、全て登録してシステムを組み直さなければならないことがわかりました。そこで、県と独立した新規事業として行うのが実際的であろうということで検討しました。
ポンぺ病・SCID の2 疾患を対象としたマススクリーニングを検討
担当してくれるところは、愛知県健康づくり振興事業団という施設で、新生児マススクリーニングを行っている団体です。当初から患者負担、有料で準備を開始しました。
ちょうどその頃、名古屋大学がSCID のスクリーニングを導入する計画を立てていて、一緒にやりましょうという運びとなり、2 疾患でマススクリーニングを開始することになりました。
ポンペ病の検査については、熊本大学医学部小児科(中村公俊先生)と化血研で行うことになりました。SCID については検査用キットがあり、それを名古屋大学が検討して具体的にできることを確認し、それと同じキットを健康づくり振興事業団で導入して行うことに決定しました。ろ紙は1 枚別個にとりまして、全部愛知県健康づくり振興事業団で集約をして、SCID については独自で検査をして、ポンペ病については熊本から結果データをいただき、データ管理、結果報告、費用回収まで全てやっていただくという体制になりました。
新規マススクリーニングの実施手順
実施手順としましては、最初に同意を得た産婦人科に説明資料、同意書、採血のセット(ろ紙)とセーフティランセットを配ることにしています。このセーフティランセットはBecton, Dickinson 社製で、プッシュすると歯が円弧を描いて穿刺するもので、一定の深さまでしか達せず、すぐ刃がしまわれるため安全に取り扱えます。マススクリーニング学会でも推奨していてしっかり採血できます。これらを1 人1 袋のセットをつくって産婦人科施設に配布をしようという計画です。産婦人科施設で家族に説明して同意を得ていただいて、専用ろ紙へ採血していただきます。ろ紙が届いたものに対しては同意を得ていることになるのでこれで検査をします。送り先は普通のマススクリーニングと同じ健康づくり振興事業団ですから、通常のろ紙血と一緒に送ってもらいます。
事業団がいろいろ検査・集約して、結果の報告は1 ヵ月健診に間に合うことが非常に大事だということでその体制にしていただきました。このため、精査、精検の体制としましては、現在のマススクリーニングとほとんど同じです。何かあると検査センターから僕らのところに連絡が来て対応を相談します。ポンペ病については熊本での検査施設が加わりますが、あとは通常のタンデムマスのスクリーニングと同じ体制でできそうだという説明をしております。
ろ紙は普通は白ですが記載部分の色をピンクに変更して専用に作成し、2 スポットの採血をお願いしています。片方にミシン目があるので、これを切り取って熊本に郵送する。失敗したら予備の部分を使ってくださいと説明しています。