日本ゴーシェ病の会 早期診断に関するアンケート調査
座談会「ライソゾーム病の早期診断の重要性」(2017 年3 月5 日開催)への参加依頼のお話をいただき、会全体の意見をアンケートとして調査しました。
我々の団体は今60 人いて、全員の回答は得られなかったのですが、Ⅰ型の患者さん8 人、Ⅱ型の患者さん9 ~10 人、Ⅲ型の患者さん5 ~ 6 人から回答をいただきました。
ゴーシェ病では異変を感じてから、診断がつくまで、皆さん結構時間がかかっています。Ⅱ型の患者さんは重篤化するのが早い。Ⅰ型、Ⅲ型の患者さんはすごく時間がかかる。「おかしいな」という不安の中で生活していることのほうがつらくて、難病という診断がついた時が、生活のスタートになるのです。できれば早く診断がついてほしいというのが大きな意見です。
骨の異常症状が出てから治療するのではなく、できれば症状が出る前に治療して症状が起こらないようにするためにも早期発見、早期治療が大事だと、皆さん、言っていらっしゃいました。
新生児スクリーニングにもゴーシェ病を是非入れてほしい、命にかかわることなのでというのが皆さんの意見でした。診断までの不安な気持ちの方が大きいです。何の病気なのだろうと。病気がわかってからの方が、治療薬がなかったとしても、患者会などでいろいろな活動ができるわけです。そういう意味でも、早期発見は大事だと考えています。
「希少疾病早期診断ネットワーク」では、ライソゾーム病を中心とした希少疾病の患者会様や専門医と座談会などを行い、早期診断に向けての新生児スクリーニングの重要性や早期診断治療の重要性を告知する活動を進めています。
ゴーシェ病はライソゾーム酵素であるグルコセレブロシダーゼ活性の低下・欠如により発症し、その発症頻度は1人/ 33 万人程度と考えられています。わが国ではⅠ型(非神経型)が多い欧米とくらべ、Ⅱ型・Ⅲ型などの神経型が多く、神経症状や骨症状などが発現する前に酵素補充療法などの治療を開始することが重要であり、そのためには、早期診断することが不可欠と考えています。新生児スクリーニングはゴーシェ病の診断・治療にとっても重要な検査と考えています。
そうした中、2017 年3 月5 日に、座談会「ライソゾーム病の早期診断の重要性」を実施し、日本ゴーシェ病の会の事務局長小野寺綾様にもご参加いただきました。
そして、患者会としての新生児スクリーニングについてアンケートとして調査をしていただきましたので、今回、本冊子にてアンケート結果の概要をお知らせしようと企画した次第です。法人としましても、早期診断・治療が進むことで、ゴーシェ病患者の皆様に少しでもお力になれるような活動を今後とも行っていく予定です。
日本ゴーシェ病の会の患者や家族でアンケート調査を実施しました。
アンケート対象者
アンケート対象患者の内訳(カッコ内はアンケート時の年齢)
アンケート内容
① 変異から診断までの年数
「あれ?なにか様子が気になる」、「何かが違うかも」と子供の発育状態、身体機能に異変を感じてから、ゴーシェ病の診断がつくまでにかかった年数を教えてください。
異変を感じてから診断までの年数
② 新生児スクリーニングをしたい or したくない?
今、新生児スクリーニング(生まれてすぐの赤ちゃんの血液を調べて病気がわかる検査)に、ライソゾーム病が含まれるか含まれないかいろいろな場面で話し合いが行われています。
新生児スクリーニングは、発症する前に特定の疾患が診断され、早期治療につながる利点がありますが、その反面、発症する前に難病を知ることになり、民間の保険に加入できなくなる場合や、精神的不安も増長されることなどが考えられます。
もし、ゴーシェ病の症状が出る前に、新生児スクリーニングをしてゴーシェ病だと知ることが出来るとしたら、新生児スクリーニングをしたいですかor したくないですか?
新生児スクリーニングをしたい 理由
新生児スクリーニングをしたくない 理由
③ 次に生まれ来る患者さんたちに新生児スクリーニングを勧める or 勧めない?
これから生まれてくるであろうゴーシェ病の患者さんにも新生児スクリーニングをすすめますか?すすめませんか?
すすめたい 理由
すすめたくない 理由
どちらでもない 理由
アンケート実施期間   2017 年1 月〜2 月28 日
Ⅰ型・Ⅲ型の成人型の患者ご家族では、異変から診断までの時間がかかっており、酵素補充療法のない時期もあったことから、治療開始にも時間がかかっています。
① 変異から診断までの年数
~ 1 年
(4ヵ月)
1名 3歳半に腹痛で受診したクリニックでお腹の腫れを指摘され、帝京大学を紹介され入院。4ヵ月後に診断、その後脾臓摘出術。
約1年 1名 乳幼児健診で発育が遅いといわれ、風邪でかかった小児科医にお腹の腫れを指摘され、大学病院を勧められたのが2 歳、3 歳で診断、12 歳で治療開始。
~2年 1名 2歳で診断、10歳で治療開始。
約2年 3名 7歳頃から股関節痛がひどく入退院を繰り返す。9歳診断、25歳治療開始。
3歳くらいから歩くのが遅かったことで両親が異変を感じた。大量出血して入院したが病名は分からず。別の病院で5歳で診断、16歳で脾臓摘出、25歳で治療開始。
1歳から異変、3歳過ぎに診断。
② 新生児スクリーニングをしたい or したくない?
新生児スクリーニングをしたい 6名 早期治療のため。
親には検査をしてもらいたい。
病気を知りたい。
治療が優先だと思う。体に不具合が現れるのが一番のデメリット。
体に不具合を感じてからでは、その分治療も大変。
少しでも早期診断の可能性があるのなら、なんでも受けたい。
何より早期治療が重要。
完治しなくても治療薬があるのならば、症状が出る前に抑え込めるから。
骨症状の悪化など取り返すには難しい病状も起きる前に予防できるなら、将来における職業選択の自由にもかかわる。
保険に入れるよりも、体の自由を手に入れるかが大切。精神的不安も軽減されると思う。
③ 次に生まれ来る患者さんたちに新生児スクリーニングを勧める or 勧めない?
新生児スクリーニングを勧めたい 6名 治療法があり、医療の開発も進んでいるから。
早く病気の知識を得られ、治療も早くできるから。
治療も早くできるので。
今後の人生と命にかかわることだから。
治療があるという情報を知ることができるから。
Ⅱ型の乳児発症型の患者ご家族では、異変から診断までの時間はほぼ1年未満であり、酵素補充療法による治療も開始されており、早期の診断を望む声が多くみられます。
① 変異から診断までの年数
~ 2ヵ月
(生後2ヵ月)
1名 兄弟にゴーシェ病患者がいた
2ヵ月 1名
3~4ヵ月 1名
4ヵ月 2名
半年 2名
9ヵ月 1名
10ヵ月 1名 兄弟にゴーシェ病患者がいた
1年6ヵ月 1名
② 新生児スクリーニングをしたい or したくない?
新生児スクリーニングをしたい 7名 ショックはあっても受け入れる心の準備ができるし、治療が早いほど神経症状の悪化の進行は遅くできて、成長の仕方が違う。保険に入れなくても特定疾患があるのでどうにかなる。
先天性代謝異常の項目があるのに、ゴーシェ病とわからなかったのが未だに思い出すと悔しい。早期発見で少し違っていたかもと思うから。
我が子がゴーシェ病だから。しかし、病気について知識のない状態だったらと考えると、検査をしたか、してないか迷うので、その時の医師の説明も大切だと思う。
早期治療ができるため。しかし、何も知らず初めての子どもだったらと考えると気持ちの整理ができず戸惑うかもしれない。
新生児の時点で治療開始ができるから。病名もわからず、治療もできず、検査をたくさんするより、精神的な負担は少ないように感じる。民間保険は無理でも、病名がはっきりわかっていると特定疾患や障がい者手帳の交付など速やかにできると思う。
早期治療は神経症状の悪化進行をおくらせることができ、数年後の状態も変わる。生活の向上も期待できる。保険のことも大きいが、命には代えられない。病名が分かるまでのモヤモヤした期間がとてもストレスだった。ゴーシェ病は早期にわかる方がよい。
早期発見は早期治療につかがるから。兄弟患児と比較しても、早期治療は神経症状悪化の進行を抑えられると実感しているため。
民間保険に入れないのは辛いが命には代えられない。
しない 1名 実際にその時になったら、違う回答になるかもしれない。
わからない 1名 病気が分かるまでの間、保育園にかよいながら、いろいろな外出ができたのも病気がわからなかったからであって、その時間が本当に楽しくて貴重な時間だったから、新生児スクリーニングの必要性がわからないという回答になった。
無回答 1名 生まれた時から発症していたので、病院の判断に任せるしかなかったので。
③ 次に生まれ来る患者さんたちに新生児スクリーニングを勧める or 勧めない?
新生児スクリーニングを勧めたい 6名 ②と同じ理由。
我が子がゴーシェ病だからこそ(現状の厳しさを含み)。
②と同じ理由。
初めての子、兄弟児の存在で考えが変わるのではないかと思う。
病気を理解して、早期治療(酵素補充)の必要性を強く感じているから。少しでも早く!という思いがある。
ゴーシェ病と診断される前から少しずつ神経症状がでてきたため、いくつも病院を回ったが診断がつかなかった。
子供が肺炎から呼吸困難を起こし、救命センターに運ばれ命を取り留めたが、診断がついたのは、さらにその1 ヵ月後であった。
診断後治療開始をしたが4歳で亡くなった長男と比べ、生後直ぐから治療開始している次男は、発達遅延はるものの5歳になった今でも元気で過ごせている。
同じ兄弟であるが、治療開始の時期によりその後の発育が大きく異なるため、是非すすめたい。
しない 1名 いろいろな考え方もあると思うから。
どちらでもない 1名 生まれたばかりで、すぐ病気がわかるとショックも大きいと思う。
保険に関していえば、治療以外で子供にしてあげたいことでお金がかかってしまうのなら、保険に加入できている方がいいと思う。
悲しみの胸中で、せめてお金の面で心配しない方がしてあげられることが広がると思う。
無回答 2名
Ⅲ型の患者ご家族では、アンケート回答患者数も3名と少ないですが、異変から診断までの時間は半年程度であり、スクリーニングを早期に行い早期治療を望む声が多くみられます。
① 変異から診断までの年数
3ヵ月 1名
半年 1名 異変を感じてから半年後に診断
1名 物心がついた時にはお腹が膨らんでいた(3歳から治療開始まで)
② 新生児スクリーニングをしたい or したくない?
新生児スクリーニングをしたい 3名 事前にすることができるならば(スクリーニングは初耳)。
病気と診断されればショックでしょうが、治療できるものであれば早い段階から治療された方が、後遺症や重篤になることを防げると思う。
生後まもなくでも、数年後でも難病と知るショックは同じ。
治療もできず、診断もつかず、病院をたらいまわしにされている方が不安だから。
スクリーニングでゴーシェ病が分かるのなら、検査を受けたい。
しかし、妊娠出産時に異常がなければ自分の子どもが病気だとは思わない。
新生児スクリーニング検査で難病が分かったならば、出産の喜びから一転し将来を不安に思う。
発病が遅く経過が緩やかで治療薬がある難病なら、出産後すぐに病気がわからなくてもよいのか悩むところだが、ゴーシェ病に関しては治療法があり、早い時点で治療を開始できるため、スクリーニングを望む。
③ 次に生まれ来る患者さんたちに新生児スクリーニングを勧める or 勧めない?
新生児スクリーニングを勧めたい 3名 早期発見は早期治療につながるため、事前に知ることができるならば義務化してもいいくらい。
治療法があるため、早期に発見されることをすすめる。
確定診断がつかない間に神経症状が進む恐怖を経験したから。
こんな辛い時間は短い方がいい。同じ思いをしてほしくない。